最新アルバム FLOR CRIOLLA『クレオールの花』紹介記事一覧
WEB
■HMV http://www.hmv.co.jp/news/article/1001080152/
新聞
■毎日新聞 「らっこアーティスト」(1月14日(木)夕刊)掲載
■日本経済新聞 (2月12日 夕刊)掲載
■朝日新聞(関東 3月12日 夕刊)ライブ評 掲載
雑誌
■タワーレコード発のフリーペーパー「Intoxicate」83号(12月、1月):CDレヴュー
■「TV Bros.(テレビブロス)」:CDレビュー (1/4)
■「SALSA 120 %」135号 (1月中旬):アルバム紹介
■月刊「ラティーナ」2月号: 記事、レヴュー(1/20)
■「ADLIB」2月号 レビュー:(1/20)
■「CDジャーナル」 2月号:CDレビュー (1/20)
■「ミュージック・マガジン」2月号 CDレヴュー (1/20)
■ 女性誌「SAVVY」(1/23)
■「ラティーナ」コンサート評(PIT INN) 3/20(土)
■4/10(土)サライ「聴く」CDレビュー
松田美緒 名花に旅の果てなく
ラテン音楽ファンが「ハチロク」と言えば、車の型番でなく8分の6拍子のこと。某テレビ番組で日本人シンガーが「ややこしいから、4分の3にしとけや」と漏らすのを聞き、落胆した。独特のスイング、ゆらぎ感覚をもたらすリズムを、約分などしちゃあ絶対にいかん。譜面を離れ体感すれば、難しくない。
欧州産のワルツやポルカは、いずれも南米でハチロクに転身。新たな魂を宿す固有の舞曲に生まれ変わった。アルゼンチンのチャカレーラやベネズエラの国民音楽ホローポにいたっては、4分の3と8分の6拍子の複合リズム。旧大陸文化の単なる模倣では、土地っ子の矜持(きょうじ)が許さなかったのだろう。多様性こそ、豊かさの証明なのだ。
松田美緒の最新作「クレオールの花」(オーマガトキより発売)。リスボン~カボ・ヴェルデ~ブラジルと航海の軌跡をたどった彼女が、ポルトガル語圏のしがらみから解き放たれ、壮大なラテンアメリカの歌世界へ足を踏み入れた。〓クレオール〓とは、混血文化の結晶とともに、新天地の誇りをあらわすにふさわしい言葉。新テーマをたずさえ、彼女が大輪の花を咲かせる。
この度の共演者、ウルグアイ出身のピアニスト、ウーゴ・ファトルーソと、パーカッショニストのヤヒロトモヒロ。松田美緒と共通のテーマを分かち合うに、これ以上ない顔ぶれ。08、09年と日本で共演するうち、彼女はスペイン語の歌を発見していった。ウーゴは米国~ブラジルで芸歴を積み、今や母国の太鼓集団を束ねる重鎮。ヤヒロもまた、とうにジャンルの枠組みを超えたプレーヤー。3者が交わすのはポルトニョール、つまりポ語とスペイン語の合体だ。
「アフロペルー音楽のサンボ・カベーロのレパートリーと、私のオリジナル『真珠のモレノ』がキーワード。2曲を中心に描けば、もっと広い意味で、ラテンアメリカのエッセンスを録音できると思った」と彼女。
絶えず旅を繰り返し、好きな歌の本質を、現場でとことん究め続ける彼女。めくるめくダイナミックな動きに、もはや〓越境〓などという直線的な語はあてはまらない。やはり2度の来日共演で縁が生まれた、マンドリン奏者リカルド・サンドバルの招きで、間もなくベネズエラへと向かうそうだ。難題だが、詩のダブルミーニングがめっぽう面白いからと、複合リズムのホローポにも本作で堂々と初挑戦。ストレートに感情を出し気合が入るスペイン語曲は、歌っていて本当に楽しいらしい。
「ブラジル音楽で表現しきれないバタくささ、土くささがある」とは、異色の名花の直感。
3月3日、新宿PIT INN。ウーゴ&ヤヒロとの発売記念ライブ。楽譜をにらみつけず、自慢のリズムを感じに来てほしい。(音楽ライター・佐藤由美)
毎日新聞 2010年1月14日 東京夕刊
らっこ・アーティスト:松田美緒 ふわり翼もち飛び立つ
当世、セルフ・プロデュースがディーバの証しらしい。とはいえ、自己愛の小宇宙をちんまり描くならともかく、大海原を渡り、歌のルーツをたぐり寄せて再構築、音楽家の賛助をとりつけ、アルバム制作を独力で進めてしまえる才人など、そうそういてたまるか。
05年デビュー作「アトランティカ」来、そのはなれわざをやってのける、松田美緒。時流におもねらず、誰のまねもせず。ポルトガル語圏の歌手や識者らもまっさおの、着眼点、企画・実行力に、小市民の反応は、ひるむかひれ伏すかのいずれかだ。リスボンのファドに学び、出会いが導くまま大西洋上のカボヴェルデ諸島で“モルナ”を伝授され、ブラジルにたどり着いた。その足跡は、大航海時代の冒険者かとみまごうほど。
きたる10月3日、7月リオで録音したフル・アルバム3作目「アザス」を、オーマガトキから発表。英知をつめこみ、綿密な構想に裏打ちされた前2作とは、ひと味ちがう出来。ふわふわの雲の羽根布団にくるまれた、ブロンズの声のよう。浮遊感にあふれ、聞く者へ心の平穏さえさずけてくれる。
最大の収穫は、ギタリストのジョアン・リラとピアニストのクリストーバン・バストス、二人だけの伴奏。饒舌(じょうぜつ)さを嫌う、ブラジルきっての達人に、歌声をゆだねたことだろう。
「いつか少人数で親密な空気のアルバムを作りたい、という気持ちがありました。いつかこの二人と一枚アルバムが作れたら、どんなにいいだろうと思っていたら、思いのほか早く実現したので、まだ信じられないくらいです」
ジョアンの家で、まるで「鼻歌を歌うように、自然に編曲ができていた」と彼女。だから「今回は編曲をゆだねるというより、私が二人に自分をゆだねた、と言ったほうが正しいのです」とも。
この安らぎが、硬質の歌声を伸びやかにした。彼女のポルトガル語詩に、リオのピアニストが旋律をつけたタイトル曲は“翼”の意。アルバムの主題は、地上のどこともつながっている“空”だ。
「今回は、等身大な自分を歌いたいというのがありました。好きな歌を選んで、二人の巨匠と録音して。それが自然にストーリーをつくってくれたように思います」
ボサノバ前夜、歌謡サンバ時代の名ソングに、さりげなく配された日本の歌がいい。武満徹、60年代の2曲や、浜口庫之助「みんな夢の中」。すべて同等にいつくしむ。中山晋平「ゴンドラの唄」は、ブラジル北東部の哀調と、幸せな融合をみた。ファド「神様」にいたっては、運命の嘆きをやめ、ゆるいブラジル人の哲学へと昇華した。まさに翼をもちて飛び立つ、乙女のかろやかさだ。
海洋……いや、空の旅人、松田美緒が、北東部出身のマエストロを招く。ジョアン・リラの参加が決まった国内ツアー、10月いっぱいかけて全国を飛びまわる。(音楽ライター・佐藤由美)
毎日新聞 2007年9月13日 東京夕刊
Copyright(C)2007 Mio Matsuda All rights reserved.